薬を長期服用することの危険性

【薬を長期服用することの危険性】

 

薬は、「短期間だけ使用する」のが基本

 

 現代医療を象徴しているのが“薬”です。

 私たちは、「虫に刺された」と言っては虫刺され用の薬を塗り、「風邪を引いた」と言っては薬を飲みます。それくらい、薬は私たちの日常生活に溶け込んでいると言ってもいいでしょう。

 確かに風邪や頭痛などといった、短期間で治る病気なら、それでいいとは思います。しかし、もし慢性疾患になってしまったら、基本的に薬を使い続けることになります。そうなると、心配されるのが副作用です。

 かつて、医療化学の祖とも呼ばれるスイスの医療学者・パラケルスス(1493〜1541)が、このように述べています。
「全ての物質は毒である。毒ではない物質など存在しない。ある物質が、毒となるか、薬となるかは、用いる量による」と。

 もともと、薬とは短期間に集中的に使用することが前提であって、長期間、使い続けるものではないということが、パラケルススの言葉からもわかります。

 

 例えば、私たちは生きるために食べていますが、現代人を悩ませている慢性疾患の多くは、食べ過ぎなどによるものです。炭水化物を摂り過ぎると、肥満や糖尿病、高脂血症などのリスクが高まりますし、タンパク質も、余り食べ過ぎると胃に負担がかかったりします。
 食べ物一つを取っても、摂取量によって、健康を害するか、寄与するかが分かれるのです。


《参考文献》
THE CHEMICAL TIMES:通巻193号、WIRED:2012年5月23日他

 

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◆私たちの身の回りは、毒で溢れている?!

 

 実際に、毒を薄めて薬としている例を見てみましょう。

 トリカブトという植物をご存じでしょうか。美しい花をつけるものの、神経に作用するアコチニン系アルカロイドを含有し、食べると死に至る場合もあります。
 一方、トリカブトの塊根を煎じて薄めたものが、漢方薬の附子(ぶし)です。附子は、強心薬や利尿薬として処方されます。

 また、ダイナマイトの原料として有名なニトログリセリンは、ちょっとした振動でも爆発する危険な物質です。しかし体内に入ると、一酸化窒素を生成して血管を広げ、心臓の負担を軽減する作用をもたらします。
 ニトログリセリンは現在、狭心症に効果をもたらす治療薬として使われています。

 

 他に、抗がん剤として使われているものに、シクロホスファミドやサリドマイドなどがあります。
 シクロホスファミドは、第一次世界大戦中に毒ガスとして使われたマスタードガスから開発されたアルキル化薬の一種で、悪性リンパ腫の治療に用いられます。
 サリドマイドは、日本でも1958年から4年間、睡眠薬や胃薬として販売され、後にサリドマイド薬害事件へと発展しました。
 サリドマイドは細胞の機能を萎縮させ、多くの奇形児が誕生しましたが、転じて現在、抗がん剤として使用されています。

 

 いくら「効果がある」と言われても、やはり毒は飲みたくないものです。私自身、今、これを書きながら、改めて健康が一番だな、と思った次第です。

 

サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋


《参考文献》
厚生労働省HP、日経メディカル:処方薬事典、isho.jp:がん看護26巻7号、他

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