私たちの体内に潜む「がんという名の時限爆弾」

【私たちの体内に潜む「がんという名の時限爆弾」】

 

◆がんから奇跡的に生還した著名人の事例

 

 実際にがんになった著名人の事例を見てみることにしましょう。
 日本を代表する建築家の安藤忠雄さんは、二度にわたるがん手術を受け、5つの臓器を摘出しています。

 

 安藤さんは、2009年に健康診断で十二指腸乳頭がんが見つかり、十二指腸と胆管、胆のうを摘出。ところが、2014年に今度はすい臓がんが見つかり、安藤さんは再び、すい臓と脾臓を全摘出するという大手術を受けました。

 

十二指腸周辺のがん切除術の一例(国立がん研究センター中央病院HPより)


(十二指腸と胆管が接している赤丸が十二指腸乳頭部、横長のオレンジ色の臓器がすい臓、その右の赤い臓器が脾臓)

 

 二度にわたるがん切除とその後の臓器再建手術、合併症などの危険をも乗り越えた安藤さんは、今も仕事を続けています。
 しかし安藤さんの笑顔の裏には、おそらく美談だけでは済まされない、たゆまぬ努力と、それを続けられる強靭な精神力があるのだと思います。

 

 現在、安藤さんは健康を維持するために、食事管理と運動や休息を欠かさず、1日6回の血糖値測定、食前に必ず行うインスリン注射、毎月の検査、それ以外にも、消化酵素剤や多くの薬を服用していると想像されます。

 

 私たち一般人が、「安藤さんと同じことができるか?」というと、難しいかもしれません。

 


《参考文献》
国立がん研究センターHP、GOETHE:2022年10月24〜29日、yomi Dr.:2023年11月18日、25日、12月2日、9日、他

 

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◆がんで手術を受けられるのは、基本的にステージ1と2の人だけ

 

 実のところ、手術ができるのは、まだがんのステージが、それほど進んでいない場合に限られます。転移が広範囲に広がっていれば、手術では取り切れません。

 

 がんは、進行状況に応じて4つのステージに分けられます。私の専門は呼吸器内科ですので、参考までに、肺がんの病期も簡単に記載しておきます。

 

《がんの4つのステージ》

・ステージ1→がんが小さく、リンパ節転移のないもの
・ステージ2→ややがんが大きい。または、がんと同じ側のリンパ節転移がある
・ステージ3→がんが周囲の重要臓器に及ぶか、リンパ節転移が広範囲に広がっている
・ステージ4→他の臓器に転移している。肺がんの場合は、胸に水が溜まり、それにもがんが混じっている

 

 通常、外科手術を行えるのは1期と2期で、3期は放射線治療と薬物治療、俗に末期と言われる4期は薬物治療がメインになります(医学的には末期という定義はありません)。

 

 薬物治療では、主に抗がん剤を投与しますが、効果があるのは3割ほどと言われています。がんといえども、もとは自分の細胞ですから、がん細胞だけを殺す薬というのは、今のところ出てきていません。
 つまり抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃します。抗がん剤の副作用が強いのは、そのためです。

 

 私は総合病院に勤めていた際、初来院時に元気だった患者様が、抗がん剤治療でボロボロになり、力尽きていく姿を幾度となく診てきました。
 今、この文章をお読みのあなたには、ぜひ元気なうちに、病気にならないよう健康でいるためのアクションを起こしていただきたいと思います。

 

サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋

 


《参考文献》
がん情報サービスHP、国立がん研究センター中央病院HP、日経メディカルOnline、他

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