「私もがんになるの?」日本でがん患者が増えている理由

【「私もがんになるの?」日本でがん患者が増えている理由】

 

◆若年〜中年層の間では、がんによる死亡率は減っている

 

 日本人の3大疾患とされているのが、がん、心疾患、脳血管疾患の3つです。中でも、がんは1980年以来、日本人の死因の第一位であり続けています。
 2022年にがんで亡くなった人は38万5797人で、対前年比で約1.1%の増加となりました。全死亡者に対するがんの割合は24.6%と、およそ4人に1人ががんで亡くなっている状況です。

 

 ところが、統計データから人口高齢化の影響を除いてみると、実は近年、いずれの病気も減少してきていることが明らかになっています。医学の発展や衛生環境の向上などによって、若年から中年層の間では、かつて恐れられていた病気の大半で死亡率が低下しているのです。

 

主要死因別年齢調整死亡率年次推移

※公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2022」より抜粋

 

 ご覧のように、若年から中年層のがんによる死亡率は長年、微増もしくは横ばいで推移していましたが、2000年以降は急降下しています。
 従って、全体でがんの死亡率が増えている理由は、日本人の高齢化による影響が大きいということがわかります。


《参考文献》
がん情報サービスHP、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023)」、厚生労働省「人口動態統計」他

 

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◆がんが発生するメカニズム

 

 実際、老化とがんは大いに関係があります。

 実は、若い人の体内でも、毎日5000個から1万個ほどのがん細胞が発現していると言われています。
 なぜ、毎日がん細胞ができているのに、私たちはがんにならないのでしょうか。それは、人間の体にはがん抑制機能が備わっているからです。

 

 がんの要因になりうるものとしては、例えば紫外線や公害などの環境要因、感染症由来、喫煙や飲酒といった生活習慣からくるものなど、多岐にわたります。
 そうした様々な要因によって傷つけられた遺伝子が変異し、一部は制御が効かなくなって細胞が異常増殖します。


 これがやがてがん化するわけですが、このがん化を抑制する代表的な遺伝子がP53です。がん患者のおよそ半数でP53遺伝子に異常が見つかっているとの報告もあり、がんの発症には、P53の機能不全が関係しているとも言われています。

 

 P53遺伝子には、「遺伝子の修復」「増殖停止(細胞老化)」「アポトーシス(細胞自殺)」「がん細胞の転移を阻害する」などの役割があります。


 上記の4つ役割の中で、増殖停止というのは、“がん細胞が無尽蔵に増殖しないよう、細胞を老化させて増殖を抑える”という働きのこと。細胞分裂もせず、機能不全の老化細胞が体内に蓄積することで、体が老化していくのです。


 つまり老化とは、もとは体をがんから守るための、重要な防御機能の一つでもあるのです。

 

 若い時は、体内のがん抑制機能がよく働くため、がんに罹ることは余りありません。しかし年を取ってくると、細胞の代謝が落ちてきて修復機能も低下し、老化細胞も溜まっていきます。
 やがて臓器不全を引き起こし、疾患の発病に至るのです。

 

 高齢化とがん死亡率増加の因果関係が、理解できたのではないでしょうか。

 

サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋


《参考文献》
国立がん研究センターHP、がん情報サービスHP、他

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