“働き者”の細胞たちのおかげで、私たちは生きている

【“働き者”の細胞たちのおかげで、私たちは生きている】

 

◆人間の体は、国家の縮小版?!

 人間の老化を、細胞の見地から述べると「老化細胞が増えることで、体の器官が正常に機能しなくなった状態」のことだと言えます。一個一個の細胞老化が積み重なった結果、ついに臓器としての役割を果たせなくなってしまったのです。

 

 すでに19世紀の時点で、ドイツの病理学者だったルドルフ・フィルヒョーという人が、細胞の重要性を説いていました。
 フィルヒョー氏は、人間の体を国家に、細胞を国民の関係に例えて、「国家が健全であるためには、国民が健全でなければならないのと同じように、人間の体もまた、細胞が健全でなければならず、細胞が正常でなくなることで、病気を発症する」と述べていたのです。

 

 実際、人の老化現象は、まさに少子高齢化社会を迎えた国家に似ています。


 こちらの図をご覧ください。

 

 

 この図は、縦軸が体内の細胞数、横軸が年齢を表しています。

人間の細胞は、25歳をピークに徐々に減っていき、正常細胞も老化して老化細胞へと変化します。

 

 でも、これが細胞数の推移ではなく、例えば、日本の人口動態推移を表したグラフだとしたら、どうでしょうか。正常細胞である若者の人口が減っていき、老化細胞が積み重なり、高齢者が増加していく様子は、まさしく“少子高齢化”です。

 

 現在、少子化による人口減少に悩んでいる日本ですが、実は私たちの体内でも、全く同じことが起きているのです。

 


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◆細胞のサイクルは、◯◯とよく似ている

 細胞のサイクルに関しては、ちょうど会社の仕組みとよく似ています。

次の図をご覧ください。

 

 ここでは、体=会社、社員=細胞、とお考えいただければと思います。

 

 細胞が元気に活動することで、私たちの体は維持されていますが、私たちが生きている環境には、細胞を弱らせる要素がたくさんあります。例えば、紫外線や放射線、多くの化学物質やカビ、病原菌等々、これらがストレスとなって細胞を傷つけます。


 しかし人間の体には、傷ついた細胞を修復する機能が備わっており、ストレスで元気がなくなった細胞も、修復されて再び元気に働き始めます。


 これが図中1の通常サイクルです。

細胞は、正社員モードで働いています。

 

 元来、細胞は50回ほど分裂した後に老化します。
 活動が止まった細胞は、老化細胞に変化したり、場合によってはがん化したりします。最近の研究によると、健康な人でも1日に5000個から1万個ほどのがん細胞ができることがわかっています。
これが図中2の老化サイクルです。

いわば、不良社員モードです。

 

 2で老化し、機能しなくなった細胞は、白血球の一種であるNK細胞などによって排除され、その減った分を幹細胞から供給された新しい細胞が置き換えていきます。
 これが図中3の再生サイクルです。新入社員が入ることで、体内は活性化され、再び細胞も元気に活動します。

 

 このように、細胞は私たちの目には見えないミクロの世界で働き続け、私たちの体を維持してくれているのです。

 

 

サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋

 

 

【参考文献】『基本がわかる分子生物学集中講義』(武村政春他1名著、2020年、講談社)、『なぜ水素で細胞から若返るのか 抗酸化作用とアンチエイジング』(辻直樹著、2016年、PHP研究所)他

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