保険診療で「病気の予防はできない」

【保険診療で「病気の予防はできない」】

 

◆「予防医療の三段階」は、果たして予防と言えるのか?

 近年の超長寿社会を見据えて、最近、一般医療(保険診療)でも力を入れているのが予防医療です。聞くところによると、大きな病院が、最新の検査設備と豪華な個室などを備えた会員制の人間ドックサービスなどを始めているそうです。

 

 その予防医療を、厚生労働省の資料では三段階に分けています。

 

生活習慣病予防の三段階



※厚生労働省「介護予防について」より一部抜粋

 

 一次予防は、個人の生活スタイルを改善することによる健康増進の段階です。いわゆるバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスを溜めない習慣作りなど。


 二次予防が、早期発見・早期治療の段階です。健康診断や人間ドックなどを定期的に受けることで、病気の早期発見につながれば、治療する場合も、体への負担が少なくて済むでしょう。


 なお、早期発見には、病気にかかるリスクの発見も含まれます。
 三次予防が、病気の重症化予防、合併症の防止、リハビリなどです。予防というよりは、病気になった後のアフターケアに関する内容となっています。

 

 ご覧の通り、予防と言っても二次と三次は、すでに病気を発病した状態であり、「これ以上、悪化しないよう予防する」という意味になっています。


 もともと、一般医療が考える予防医療とは、「病気になった後に、その原因を断つ」という発想からきており、これは保険診療である以上、やむを得ません。

 

《参考文献》
厚生労働省HP、日本学術会議第7部予防医学研究連絡委員会:平成12年5月29日、他

 

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◆「予防するのは、病気にならないため」

 そもそも、誰もが病気にはなりたくないはずです。つまり、予防とは“病気にならない”ために行うものです。


 こちらの図をご覧ください。

 

予防医療と一般医療の境目とは?


 

 病院で保険治療を受けるには、医師によって病気と診断される必要があります。病気かどうかを判定するには診断基準があり、例えば血圧が140以上ある人が高血圧と診断されます。
 よって、血圧が139以下の人は高血圧と診断されないわけですが、「だったらその人は健康なのか?」というと、そうとは言えないでしょう。

 

 ですから、早期発見と言っても、実際は“病気未満”の人を発見することはできません。それが、図の未病Zoneにいる人たちです。
 未病Zoneの人たちは、まだ十分、健康体に戻れる位置にいますが、治療対象から外れているため、そのまま放置されているのが実情です。

 

 確かに、健康指導なども行われているでしょうが、まだまだ国民の健康に対する意識が十分上がっているとは言えない状態です。


 健康は、最終的には個人の責任とはいえ、膨張し続ける社会保障費が国家を破産の淵に追い込んでいる状況を改善するには、もっと人々の意識改革が必要だと考えます。

 

 もちろん私たちは、定期検診や早期発見・早期治療の意義を否定するものではありません。とはいえ、高額な人間ドックを受診する前に、もっと一次予防の重要性にも目を向けるべきではないでしょうか。


 結局のところ、予防医療の本質とは、一次予防にこそあるのですから。

 

サーチュインクリニック大阪 院長 鈴木嘉洋

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